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イベント情報

2024年3月12日

HOKKAIDO BRANDING SUMMIT.2023 開催レポートvol.4

組織アイデンティティと個人の距離感

ブランディングの役割や具体的な取り組みについて出演者と参加者が共に学び、気づきを共有できる場「HOKKAIDO BRANDING SUMMIT. 2023」が、2023年11月17日アスティホールで開催されました。
サミット第5回目となる今回は、「 企業が変わる、人が変わる、行動が変わる。」をテーマに全4プログラムで構成。
自身も実践の場に身を置いている、もしくは数々の企業をコンサルティングしてきた経営者である5名に
ブランドアイデンティティ”の重要性と、「組織」そして「個」へのアプローチ方法について語っていただきました。

PROGRAM04 トークセッションでは、株式会社MIMIGURI 代表取締役 Co-CEO ミナベ トモミ様がご登壇。(※当プログラム登壇予定の安斎様は体調不良のため欠席)
「個と組織を成長させるアイデンティティの活用」をテーマに、組織と個の一体感の重要性についてお話いただきました。
Vol.4では、PROGRAM04についてお届けいたします。

<出演>
株式会社MIMIGURI
代表取締役 Co-CEO ミナベ トモミ 氏

早稲田大学卒業後、家電メーカー勤務を経て独立。現在は、MIMIGURIが提唱するCCM(Creative Cultivation Model)の理論開発を基盤に、多角化企業における経営・組織変革の専門家として自社経営とコンサルティングにおいて実践を進めている。

目次

  • MIMIGURIがやっていること
  • 「個人と組織」のアイデンティティの距離感が鍵?
  • (変化に向けて)組織と個人の「一体感」を高めるには?

MIMIGURIがやっていること

まずはミナベ様が代表取締役を務める「株式会社MIMIGURI」がどのようなことをされている会社なのかご紹介いただきました。

<事業>
経営コンサルティングファーム
文科省に認められている研究機関でもあり、どのような組織づくりをすることで、より良い未来に辿り着けるのかという研究とコンサルティングをしている。

<MIMIGURIでの共通ワード>
「ポテンシャルフェチ」
人間は誰しも輝く才能があるという考えの元、個々の才能を活かしながら、そのポテンシャルを活かしていくという信念があるMIMIGURIを象徴するワード。人と集団のポテンシャルを引き出す組織づくりの研究と実践を手がけるMIMIGURIならではの共通言語。

<出版>
「問いのデザイン」「問いかけの作法」など書籍の出版も行なっている。
特にこの2冊の問いシリーズは累計発行部数9万部突破。是非、2冊合わせてご覧ください。

「個人と組織」のアイデンティティの距離感が鍵?

ここからはウィン代表勝山とのトークセッションを挟みつつ、組織変革でおこる個人の気持ちと組織アイデンティティとの距離感についてお話いただきました。

理念の研究も行なっているMIMIGURI。理念研究の分野では「組織アイデンティティ」というワードが今注目を集めているそうです。その理由は、日本の経営者は理念・想い・価値観といったバックグラウンドを重視する経営者が多いこと、そして組織変革の際、組織アイデンティティに注目する事で、うまく未来に向かっていけると言われているからだそうです。

組織アイデンティティとは「私たちらしさ」です。ミナベ様曰く、「組織として一体感を持つとは、組織アイデンティティ(私たちらしさ)に対して、個人のビジョンが「ピン!」ときて、想いに共感できているかどうか」が大切。

これが一致すると、
・組織のために頑張ろうと、よりよい仕事の仕方を考える
・組織のメンバーを助ける
・組織に定着する

という変化が起こってくるのです。

逆に私たちらしさに「ピン!」ときていないと、エンゲージメント(企業と従業員の結びつき)に対するコミットメント(当事者意識)が弱まる傾向にあるそうです。

また会社の中でお通夜会議(進行役が語り掛けても返事や反応が返ってこない会議)のようなシーンがある理由には、組織アイデンティティの揺らぎにあるのではないかと言われているようです。ネジ製造業の話を例に挙げて解説いただきました。

例)ネジ製造事業を営まれていた〇〇会社。『「ネジにこだわりを持って製造すること」を暗黙的に私たちらしさだと職人さんが思っている』。しかし、経営者がネジの製造だけでは今後生き残ることは難しいので、他に機械などの製造もやっていこうと掲げた。そうすると戦略上は正しいかもしれないが、職人さんの気持ちが追いつかず、ネジ製造業ではなく、製品製造会社になってしまったと組織アイデンティティである私たちらしさが揺らいでしまったというケース。

上記ように組織変革をしようとする際に、組織アイデンティティが揺らぎ、個人の気持ちが追いつかなくなることもあるので、注意が必要との事でした。

●トークセッション

(勝山)例に挙げていただいた製造会社さんですと、普段はルーティンワークとしてネジを作ることに誇りを持っていると思います。しかし、突然経営者層から組織変革のためにネジ以外も製造しますと言われると、経営者層との「ギャップ」を感じると思いますが、そのギャップをどうしたらいいのでしょうか?

(ミナベ)そこで大切になってくるのが「問いと対話」です。組織アイデンティティの浸透に重要なのは、そもそもを自分に問いかけ、頭の中で考えて発話するということです。そうすることで共感が生まれます。

(勝山)年齢的にもその業務をやっている期間が長く、いきなり「アイデンティティを問い直そう、私たちが提供しているのは生活者の喜びです」という風に言われた時、ピンとこないと思います。こういう方に対してどうアプローチしてきたのか教えていただけますか?

(ミナベ)アイデンティティを深めることは、一体感の鍵となる「我々は〇〇である」ということをお互いに理解していくことです。
ウィンのスタッフさんにアイデンティティを問いかけると、「ウィンは誠実さである」と言います。さらにどういうところがウィンさんにとっての誠実さなのか伺うと、「お客様が言ったことを1回きちんと受け止めて内省してしっかり本気で考えて考えて…という姿勢がウィンにとっての誠実さである」と言われていました。実際に僕も勝山さんとお話しする中で、勝山さんに誠実さを感じますし、企業経営に向き合いながらブランドを作り上げていく誠実さがウィンさんっぽいなと感じます。

この経営者とスタッフのギャップ感がない状態が、まさに「我々は〇〇である」が一致しているという事です。ウィンさんのカルチャーを見て思うことは、問いかけると率直に答えてくれることです。それは普段からしっかり対話をしているからであり、それがとても重要なのです。「我々は〇〇である」ということをしっかり対話していくことで、少しずつ「筋肉」を鍛えていく。この認識を持つことがとても重要かなと思います。

(勝山)「我々は〇〇である」ということをしっかり対話していくこと=筋トレなのであれば、回数が重要でしょうか?

(ミナベ)そうですね。ひたむきに業務に向き合っていると「我々は何だろうね。」と話す機会はないので考えないじゃないですか。一方経営者層は、そういうことを考える仕事なので考えます。この「筋肉を鍛えている回数の違い」というのが距離が離れてしまう原因になってくると思います。

(勝山)先ほどの製造業のお話に戻します。高齢の方でそういう筋肉をしばらく使ってこなかった方に「今後変革していかなければいけず、御社はこういうアイデンティティだと思いますが、どう思いますか」と問いかけた時に、お通夜会議になることはありそうですね。

(ミナベ)あります、あります。私がお仕事いただくケースでもお通夜会議になることはありますね。

(変化に向けて)組織と個人の「一体感」を高めるには?

組織と個人の一体感を高めるヒントに加え、ミナベ様ご自身が携わってきた取り組みをご紹介いただきました。

●変革の動機づけ
普段から経営者やマネジメントをしている方とお話されることが多いミナベ様。こうした立場の方々は視座が高い故、今後会社が大変になってくることが見え、「変化しなくては」と考えるそうです。しかしこうした変化は瞬間的には効果的ですが、継続的ではないそうです。変化する為には、自分達の心がワクワクするような動機づけが大切で、自分達はどうしていきたいという気持ちが重要だと、下記のような図で解説いただきました。

<事例:CITIZEN>
課題
若手デザイナーが増える中、ユーザー目線やトレンドを意識しすぎるあまり、これまで培ってきた”シチズンらしさ”の輪郭がぼやけてきていた

プロジェクト
新しいイノベーションを起こして、新規事業を作る
→過去の歴代6,000モデルを全てレビュー
CITIZEN全盛期の歴史を経験し今のCITIZENを作り上げた大切な原点
こだわりを持って作り上げてきたその「熱意」を思い起こす

▼ワーク
・「私がCITIZENらしいと感じる過去モデルを3つ選ぶとしたら?」

●トークセッション
(勝山)このプロジェクトはどのくらいの人数でやられたんですか?

(ミナベ)プロジェクトオーナーは我々が務め、内部の方も巻き込みながら行いました。我々が離れてしまうと対話しなくなるのは意味がないので、内部の方も巻き込みながらやらせていただきました。

(勝山)人数も多いですから大変ですよね?

(ミナベ)大変でした。1回盛り上がっただけでは対話は復活しないので、年単位でひたすら時間をかけてしっかりやりました。組織変革でアイデンティティが変わるには数年かかると言われています。しっくりくるには時間がかかるので、しっかりやりました。その後『私たちが次の100年に残したい「CITIZENらしさ」とは何か?』を考えましょうという課題を行うと結構盛り上がっていました。

(勝山)最終的に言語化されたのですか?

(ミナベ)しました!CITIZENについて書籍化しCITIZEN社内で所蔵されています。AXISでCITIZENの記事が掲載されていますので、是非ご覧ください。

【AXIS HP】
https://www.axisinc.co.jp/news/2022/384.html

<事例:SHISEIDO>
課題
資生堂グループは世界中に社員4万6000人を抱えており、国籍も業務内容も異なる全社員に対して、行動指針「TRUST8」を浸透させる世界規模の施策が必要となっていた

プロジェクト
ビジョン実現のための8つの行動理念「TRUST 8」という理念を構築
→ただ作って従業員に共有しても全く共感されないため、「TRUST 8」とは「どういうことなのか」を問い直していく

ワーク
トップが定めた8つの行動理念をチームの実態に合わせて「1つだけ差し替える」としたら?

●トークセッション
(勝山)「TRUST 8」と言葉では認識できても、その解釈は十人十色ですよね。対話していくことで自分の認識を知ることができますよね。

(ミナベ)先ほど出てきた「誠実」のお話のように、誠実という言葉も人によって解釈が様々です。「それってどういうこと?」を考えていかないと意識が釣り合ってこないので大切なことです。SHISEIDOさんでは、『トップが定めた8つの行動理念をチームの実態に合わせて「1つだけ差し替える」としたら?』というワークを行いました。これは営業は営業の実態、事務は事務の実態に合わせて「1つだけ理念を壊して差し替えるとしたら?」というワークです。このワークもすごく盛り上がりまして、考えるきっかけになりました。人数が多い中でこういった契機がないと難しいです。
チームで作り替えた理念を身体表現をしてポスターを作り、みんなで眺め合い鑑賞会を行いました。そして従業員に浸透していったということになります。記事もありますので、合わせてご覧ください。

【ayatori HP】
https://mimiguri.co.jp/ayatori/shiseido/

(勝山)小規模の会社でも対話の重要性を取り入れていくとしたら、どう取り入れていったら良いでしょうか?

(ミナベ)小規模の会社など円座になって集まれるくらいの距離感だったりすると、お仕事の実態とアイデンティティが密接に絡みつくと言われています。空中戦で私たちらしさを対話するのではなく、それぞれが現場でやっていること、お客様の悩みに対してどうアプローチしているかを話しあうコミュニケーションを行うと良いと思います。普段仕事に対してどうこだわりを持ってやっているかを対話することが大切だと思います。

(勝山)MIMIGURIでは対話はされていますか?

(ミナベ)めちゃくちゃしています。MIMIGURIでは全社総会をしていまして、めちゃくちゃ命をかけて、命を削られています(笑)普通全社総会は半年1回、年1回程度ですが、月1回開催しています。参加する人たちが組織づくりのプロなので下手なことができないという気持ちがあります。月1回半日、全社総会というアクティビティを通して対話することで共有体験をして仲良くなっていくようにしていますね。

(勝山)話は変わりますが、経営者層やミドルマネージャーが一般従業員との対話において、問いのスキルを上げていくにはどういったスキルアップができるでしょうか?

(ミナベ)まず組織づくりで大切なのは「ミドルマネージャー層がいかに躍動するか」です。ミドルマネージャーの方が経営者層の方と分断していたり、複数人のミドルマネージャーがいてそこに繋がりがない場合、ミドルマネージャーによって言うことが違ってきます。
そもそも経営者層とミドルマネージャーが問いを持って対話をして、「私たちらしさってなんだろう、どうしたらうまくいくんだろう」ということを日々対話することが会社の貢献率に大きく関わってくると僕は思っています。トレーニングにも紐づくのですが、日常的にその話をしていますか?というのが大切だと思います。

(勝山)トップ層、ミドル層、一般社員層がいたときに、トップ層とミドル層が対話できていないとダメということですね?

(ミナベ)そうなんです。ミドルと一般社員が対話できていないケースの裏には、そもそもトップ層とミドル層が対話できていないケースがあるのです。
人ってマネジメントされている通りにしか人をマネジメントできないので、きちんとミドル層に対話を望むのであれば経営者層がミドル層に対話する必要があります。

(勝山)普段対話や問いについて考えていなかったミドル層の方がいたとしても、対話は筋トレなので、トップ層がミドル層に対して伝播していくことが大切ということですね。

(勝山)トップ層が対話に価値を感じていないが、ミドル層は感じている場合はどうでしょうか?例えば、ミドル層は今後会社を担っていく若い方で、トップ層は根性論や精神論で考えてしまうようなケースです。

(ミナベ)対話って自分とは違う価値観の人を理解して、健全にうまくいくように話し合うことだと思います。ハードルは高いですが、重要なのは相手が思っていることを理解する、その上で意見を伝える、お互いをきちんと理解し合うことだと思います。
多分経営者の方は、これをすごく喜ぶと思います。なのでやってみるといいと思います。

(勝山)まずは経営者の想いを知るですね。

(ミナベ)そうですね、きちんと相手の想いを受け止めて共感を示して対話を作ることが大切ですね。

(勝山)ミナベさんが働かれる中でこれが大切だと感じることはありますか?

(ミナベ)個々の価値観が広がる中で、価値観を一方的に押し付けるのは難しい時代だと感じています。世界的にも燃え尽き症候群が増えています。燃え尽き症候群は、頑張りたいと思っているが貢献することができない、頑張れないという不一致感です。今、大転職時代とも言われています。話が通じないとうまく受け入れることができなくて燃え尽きてしまうケースが多いです。そういうのが問題になっていて、その中で「Belonging(ビロンギング…所属、一体感、帰属意識のこと)」ということは改めて言われていて、個々の個性を失わないようにしながらも、一致感を探って居場所のある状態を組織づくりの中で重視する傾向になってきています。

(勝山)組織のアイデンティティを持つことが大切ですが、個人のアイデンティティも大切ということですね?

(ミナベ)組織と個人では違うということですね。違うからこそ日々対話していかないといつの間にか分断が広がっていってしまいます。ここにコストをかけていくことが経営投資としても比較的ROI(投資利益率)が高くなっているという話でもあります。

(勝山)ポテンシャルを引き出すことにつながるのであれば、生産性も上がるということですね。個人のアイデンティティややりがいを引き出すスイッチを押すような問いのサンプルはありますか?

(ミナベ)MIMIGURIがやっているCULTIBASEという学習プラットフォームがありまして、「好奇心スイッチを押すための問いのデザイントレーニング」という動画を流しています。
経営者の皆様ですとこうなりたいという「憧れ」が契機になったり、自分自身がどういうやりがいを感じる人間なんだろうという「自己」を対話のきっかけにすると問いとしてとても良いです。
あとは共感です。「わかる!」というプロセスが楽しかったりします。

(勝山)一方的に決めつけない相手を探っていくような問いを立てることが大切なんですね。相手に何に反応するかわからないですからね。

(ミナベ)経営者は「憧れ」が強い方が多いので、同じベクトルで協力関係を結べると良いですね。

CULTIBASE「好奇心スイッチを押すための問いのデザイントレーニング」一部

(勝山)僕も企業理念の構築をお手伝いする中で、出来上がった際に、「本当にそれでいいのか?」をチェックする方法として、従業員の方に「達成した時に喜びや誇りを感じますか?」と問いかけます。そういう時に初めて理念に対する感情レベルの理解や共感具合を話してくれるケースが多いと感じます。

(ミナベ)とても良い問いだと思います。結構あるのが組織変革で変えることが主語になると、その結果どういう状態が自分にとって良い未来か待っているのか想像がつかない状態で共感できないケースもあります。なので、言葉にすることは良いことだと思います。

■まとめ
MIMIGURIにて理念研究、その実践をされているミナベ様。
組織変革を起こす際に組織アイデンティティが揺らぎ、従業員に混乱が生じること、いかに組織アイデンティティと個人の一体感を増すことで良い未来に向かって進んでいくことができるかお話いただきました。
組織の変化についていくための学びもありながら、普段の自分の振る舞いを思い返しながら「対話」をしていくことの重要性に気がつく講演でした。

■お客様の声を一部ご紹介
・トークを聞いてワクワクしました。面白かったーとライブ後のような気持ちです。

・自社の現状、課題とリンクする内容が多く、学びがありました。

<出演>
株式会社MIMIGURI
代表取締役 Co-CEO ミナベ トモミ氏

<主催>
株式会社ウィン
株式会社MIMIGURI
プラスディーアンドシー合同会社
PMC株式会社

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